研究概要 |
1.経鼻胃管栄養を行っている重症心身障害児5名(患児A,B,C,D,E)を対象に、適切なチューブ交換時期を検討する目的で、交換のために抜去した留置中の栄養チューブを採取し、細菌学的検査を実施した。 2.患児から抜去したチューブは直ちに冷蔵保存し、数時間以内に細菌検査を行った。チューブを胃内の先端より5cm間隔で計7本(先端より全長35cm)切断し、それぞれのチューブの内側を滅菌綿棒で拭き取り、0.25ml滅菌水に溶解した。この液をBTB寒天培地(極東製薬)、5%羊血液寒天培地(栄研化学)、チョコレート寒天培地(極東製薬)およびCHROM agar Candida(BD)の各培地に滅菌スポイトで1滴ずつ滴下後、白金耳で培地一面に拡散した。BTB寒天培地はO_235℃下に、5%羊血液寒天培地とチョコレート寒天培地は5%CO_235℃下にそれぞれ一夜培養した。CHROM agar CandidaはO_235℃46時間培養し、CRYSTAL(BD)同定キットを用いて同定した。Methicilin resistant Staphylococcus aureus(MRSA)はMRSA Screen Agar(BD)に発育したS.aureusをMRSAと同定した。菌量は半定量的に判定した。 3.検査を実施した患児5名中、口腔・消化管内常在菌ではない細菌が検出されたのは1名(患児E)で、MRSAがチューブ先端5cmの部位に検出された(培地面1/4に発育)。また、消化管内常在菌ではあるが、患児の全身状態によっては重症な致死的感染の原因となるEsherichia coliをEに(培地面に数コロニー)、PseudomonasをDのチューブ先端に認めた(培地面に数コロニー)。 4.患児からのMRSA検出は、人工呼吸器使用に伴う数回の入院が関連していると推察された。 5.患児A,B,C,Dからの検出菌の細菌叢に、著名な変化は認められなかった。 6.Eを除く4名のチューブ留置期間は、全員1週間だった。Eは2〜3週間だった。 7.在宅で経鼻胃管栄養を実施している重症心身障害児について、1週間の経鼻胃管留置期間は適切であることが示唆された。MRSAが検出された患児の経鼻胃管の留置期間と看護ケアは、今後の検討課題である。
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