1)平成15年度も研究代表者と研究協力者は、継続的に乳がん患者会の定例会にアドバイザーとして参加した。患者会における患者同士の交流の様子を知り、大津市で開催された日本女性会議での展示をはじめ社会活動への支援を行い、支部のイベントでは、研究成果についての講演を行った。 2)研究代表者は、前年度に引き続き、患者会会員のうち、賛同を得られた方5名から乳がんの回復過程について聴き取りを実施し、病いの経験がそれぞれの自立への過程であることが明らかになった。 さらに、ロサンゼルス市内でクリニックを開いている日本人医師からの紹介により、ロサンゼルス周辺に在住する日本人女性で、移住後に乳がんを発症した11人(40代から70代)の方々の聴き取りを実施した。アメリカにおいてはインフォームドコンセントが、いわば、シビアに進んでおり、患者は、手術を受ける医師の選択をはじめ、術式、後療法など自己決定を迫られる場面が多いことがわかった。しかし、初期は困惑しても、対処していくその過程で、治療に関する知識を多く得て、自らの身体観を深めていることがわかった。また、乳がんの治療や術後の生活等に関する解説書は、日本で出版されているものよりも、米国のもの、とくに、Dr.Loveの著書が実際的でわかり易いという実態を知った。 さらに、移住後、生活が安定するまでの困難な状況などについても聴き取ることができ、研究者は病いをその人の生活過程のなかで捉えていくべきであることを再認識した。 3)13年度末から14年度にかけて実施した質問紙調査-対象は(1)患者会患者(2)乳腺外来通院患者(3)患者会リーダー(4)看護師(5)医師(6)アメリカの患者会患者-であるが、その結果について研究協力者を交えて検討考察した。このうち、(4)と(5)については原著論文として京都府立医科大学医学部看護学科紀要に掲載された。他の調査については論文として投稿するべく、現在執筆中である。
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