研究概要 |
目的:患者の基本的欲求に基づく生活状態の観点からインシデント事例(事故を含む)の実態を把握し、個々の事例がひきおこされた背景を検討する。 対象と方法:全国の大学附属病院154施設に勤務の看護師(研究1)およびA県看護専門学校35校に在校の看護学生(研究2)を対象として郵送調査を実施した。事例の発生は、研究1では看護業務38項目について平成13年9月1日から9月30日までの一ヶ月間、研究2では31項目について臨地実習期間(約6〜7ヶ月)とした。 結果 研究1:有効回答は、5,304名分(78施設)であった。看護業務38項目のインシデント事例は6.1%(うち、事故例は1.0%)であった。頻度が多い項目は、「同室の患者の処置時に必要以上に大きな音をたててしまった(22.9%)」、「回診車の動きが悪く音が気になった(21.5%)」、夜間巡回時に懐中電灯を患者の顔に向けてしまった(15.4%)」、「感染マニュアルに準じた行動の欠如があった(12.2%)」、「適切な体位変換をしなかったことにより褥瘡が発生した(11.0%)」、「手洗いが不十分であった(10.9%)」等であった。インシデント発生の時間帯は日勤が65.5%、深夜が24.2%、準夜が10.2%であり、インシデント体験者の28%が当日の疲労があった。看護業務38項目を合計して、個々の看護師のインシデント体験を得点化し、経験年数との関連をみると、経験年数が長い程インシデントの発生が少なかった(相関係数=-0.168、p<0.001)。 研究2:有効回答は、1,176名分(30校)であった。インシデント事例の頻度は、「全身清拭、部分浴、洗髪時の湯温が不適切であった(42.2%)」、「体位変換時にベッド柵をかけ忘れた(37.4%)」、「無菌操作が不完全であった(39.4%)」、「血圧計の水銀柱がベッド上で倒れた(28.5%)」等であった。
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