研究概要 |
目的:介護保険開始後の在宅ケアでは,サービス提供機関の競合や組織系統が複雑化していることから,介護に関わる各職種の役割関係にも変化をもたらしている。新たに,どのような連携が必要とされているのかを明らかにすることが必要である。本年度の研究では,在宅ケアに関わる看護職および介護職を対象として,各職種の役割と連携をめぐる課題を質的に検討し,多職種の協働活動を促進または阻害する要因を明らかにすること目的とした。 方法:神戸市内及び近郊に所在する介護療養型医療施設,介護老人保健施設,介護老人福祉施設,訪問看護ステーション,在宅介護支援センター,ヘルパーステーション,民間ケアサビース事業所に所属する施設の看護職9名,施設の介護職9名,訪問看護婦5名,ホームヘルパー5名,社会福祉士5名を対象として,職種を混合した5グループを設定し,グループインタビューを実施した。介護保険開始後に変わったことを中心として,(1)連携協働活動の円滑な例と困難な例,(2)困難点の解決策,(3)行政に期待すること,(4)自分の職種の役割について,参加者間で自由に討議された内容を吟味・検討した。インタビューは2001年10月〜11月に実施した。 結果:連携を円滑にする要因として,同じ職種や同じ組織などでの日常的な交流,異なる職種どうしの会合,病院内の地域ケア支援窓口,各職種の知識や技術の共有,相手の能力を尊重する姿勢,多職種間の意見を調整する人材,相互に協力関係を求める姿勢などがあげられた。困難にする要因には,介護職と看護職が分業体制で独立,在宅生活に対する施設勤務者の想像力の限界,一方的な連絡や指示,介護支援専門員の技量差,各職種の役割分業の固持,個人的な人間関係や非協力的な態度,医師の指示に左右される利用者の意向などが指摘された。これらを今後の質問紙調査の基礎資料とするため,詳細な分析をすすめている段階である。
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