研究概要 |
介護保険開始後の在宅ケアでは,サービス提供機関の競合や組織系統が複雑化していることから,新たにどのような職種間連携が必要とされているのかを明らかにすることを本研究の目的とした。平成13〜14年度においては,在宅ケアに関わる看護職および介護職を対象として,各職種の役割と連携をめぐる課題に関するグループインタビュー調査を実施した。介護保険制度の導入直後から1年後の変化に着目した分析の結果では,職種間の業務分担や連携・協働のあり方は多様であり,流動的な特徴をもっていることが明らかとなった。 これらの結果に基づいて,平成15年度の研究では,居宅介護支援事業所に対する調査を通じて,介護保険下における多職種の連携・協働形態を明らかにすることを目的とした。介護保険制度が導入されて3年が経過した現在,組織内の職種間関係,他の組織との組織間関係,組織の変動や再編成などについて,事業管理者の認識を明らかにすることは,今後の看護職および介護・福祉職の役割と連携・協働の方向性を探る上で重要と考えられた。 定量的な調査枠組みと調査項目を再検討し,兵庫県内に所在する居宅介護支援事業所1,085件に対して,郵送法による調査を実施した。返送等を除く1,044件のうち397件(38.0%)から有効回答を得た。基本情報のほか,(1)組織間および組織内の関係,(2)管理経営的側面と連携協働への影響,(3)組織の課題,(4)教育・研修システム,(5)ケアマネジャーに対する評価を重点的検討課題とした。主な結果として,居宅サービス事業所の増加を背景として財政上の対応とサービス向上の取り組みに向けた組織的対応が図られていた。職員の情報交換の場として,サービス担当者会議,行政機関や協会等が実施する研修が主要なものであった。ケアマネジャーの職務状況に対する評価は組織内と組織外で異なり,情報量と質のばらつき,他の法人組織との関係に多くの課題を抱えている現状が推察された。
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