研究概要 |
2000年1月1日より5月8日までの期間に神奈川県A救命救急センターに1次あるいは2次救急で受診した延べ5,335例の中から、慢性的健康問題を持つ成人患者を抽出し、主な健康障害の特徴別に受診前後の保健・受診行動について経過を追跡した。 健康障害の特徴別に分類した受診理由で多かったものは腹部・背部痛で、その内50例が尿路結石症(疑い)の診断を受け、救急外来の受診後に泌尿器外来を受診し、受療行動を継続していた。喘鳴や呼吸困難で来院し、吸入や輸液療法を受けたのは45例あった。この事例の殆どは救急外来受診以前から気管支喘息の診断を受けており、短期間に複数回に渡って救急外来を受診している例も見られた。41例は膀胱内留置カテーテルやCAPDなどの各種ドレーンやカテーテルのトラブルで受診していた。救急外来でカテーテルの入れ替えや抜去などの処置を受けた後、定期通院中の外来を受診していた。腹痛と嘔気の症状で来院した事例の内、イレウスと診断されたり、疑われたのは35例であった。これらの殆どは腹部の手術を受けた経験を有していた。その他、高血圧症との関連が疑われた30例では、頭重感や鼻出血などの自覚症状とともに自宅で測定した血圧値の上昇が心配となって受診した事例も多かった。糖尿病に関連する健康障害で受診した22例の内、糖尿病性ケトアシドーシスを来していたのは5例のみであった。 本研究の結果から、慢性疾患の急性増悪として救急外来を受診する理由は、苦痛を伴う症状の急激な発現と在宅療養上のトラブルおよび、疾病コントロールの不良に分類され、受診行動に特徴が見られた。また、患者が健康障害の発現と進行を予防するための意思決定プロセスを構成する要素が明らかとなった。
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