研究概要 |
平成13-14年度にわたる研究において、比較的長期間に渡る在宅ケア(看護)の効果判定に活用することを目指したアウトカム指標の開発を行った。対象はT大学病院神経内科を平成7年から5年間に生存退院した、脳血管障害と神経難病患者と家族である。郵送法追跡調査を実施し得られた524名のデータを解析した。研究倫理面への配慮として研究開始前に、調査票に研究の目的やプライバシー保護に関する事柄を記述したのを始め、本学倫理委員会規定に基づく審査を受けた。過去10年の筆者らの研究知見から質的にアウトカム指標の項目を検討し、最終的に30項目から構成された暫定的アウトカム測定尺度を構成した。その上で、心理統計学的解析、及び共分散構造分析を用いて、尺度の内部信頼性及び構成概念妥当性を検証した。その結果、アウトカム指標は計25項目5次元の尺度から構成された。すなわち、(1)疾病障害対処困難・不安指標、(2)家族介護負担・Strain関連指標、(3)運動機能・LADL機能不全指標、(4)身体症状発現指標、及び、(5)地域医療・ソーシャルネットワーク阻害指標であり、内部信頼性は、0.784-0.916であった。次に、これらの5指標を潜在変数とする2次因子モデルの成立の是非を共分散構造分析によって検証した。項目数が多いため初期モデルでは適合度が悪い結果となり、観測変数の誤差変数間に5つの残差共分散を設定した。その結果、適合度指標はGFI=.945,AGFI=.913,RMR=.094となり、採択できる適合度を得ることが出来た。各指標は性別との関連が低く、日常生活動作レベルと中等度の相関を示した。また、身体および精神症状の有無でみると、多くの症状で症状有り群が有意に低いアウトカムとなっていた。疾患別ではいわゆる3大難病患者のアウトカムが低下していた。以上のように、統計学的には、ある程度支持される結果を得た。さらに、1回目調査から2年後に1回目調査の回答者のうち同意を得られた方に対して2回目の調査を実施した。51%の回収率で現在解析を進めている。これまでのところ、1回目調査でアウトカム指標得点が悪い人の期間中(2年間)の死亡が多いことが認められた。
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