研究概要 |
看護者の手の使い方の特徴について、圧力をパラメーターに研究をおこなってきた。その結果、手の使い方は熟練看護者と初学者(看護学生)では異なり、使い方の左右差は支持面の面積によって異なることなどが明らかとなった。さらに圧力の時間的推移を知るために、感圧導電性ゴム(イナバゴム(株):SF4L)を布製手袋の内側面に貼付した「手袋型圧力センサ」を試作し、その特性について調べた。この実験においては多点計測を行えるよう、片手で28カ所を設定した。その結果圧力と出力電圧の関係は、第三末節骨を除き625〜2,500g/cm^2の範囲で直線性が確認されたが、2,500g/cm^2以上では出力電圧が飽和状態になる傾向が見られた。これはセンサと手掌の間に手袋を介しているため、布に圧力が吸収されることが原因と推察された。そのため実用に際しては圧力の検出範囲が限られてしまうという課題が残されており、現在手袋の改良に取り組んでいる。 手袋改良と並行して、手袋を介さない方法で圧力測定を試みた。これは同センサを医療用テープを用いて術者の手掌部に直接貼付し、人間の下肢を模擬したモデルを挙上する際に、看護者(右利き)の手にかかる圧力を計測する方法である。この結果下肢挙上時の手掌部にかかる圧力は、各術者によって異なる部分もあるが、左手の第3指基節骨と第1指下の手掌部、右手の第1指下の手掌部の「3点」を中心に支える傾向が見られた。また、左手第2指基節骨直下の部位は、左手の第3指基節骨部分の代替として用いられたり、同時に用いられていた。 このことから看護者は、下肢を挙上する場合には「三角形状」に力を分散して支えているか、もしくは左手第2指基節骨直下の部位も用いて「4点」にすることにより、安定性を確保しているものと考えられた。
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