水銀血圧計を用いた聴診法による血圧測定では、コロトコフ音の発生や消失によって最高血圧と最低血圧を測定している。しかしながら、このコロトコフ音は血圧値を直接示すものではなく、発生・消失値がそれぞれの値と非常に近いという臨床結果を利用しているにすぎない。 これまでの研究結果では、コロトコフ音の発生原因は血管の振動や血流の変化によるものと考えられている。そこで本研究では、血管や血液の状態の変化がコロトコフ音に影響を与えるのではないかと考え、それらの相関の解明とそれを臨床教育へ応用できるシステムの確立を試みている。 本年度はまず、コロトコフ音の音分析をするために日常生活を普通に送っている成人男女41名のデータ収集を行った。収集をしながら音の採取方法についての検討を進めている。さらにこのデータをもとに音分析の方法を模索中である。 また、循環器アセスメント能力の育成のひとつとして集められた音を使った教育用の血圧測定シミュレータを作成した。これは、血圧測定のWeb教材にコロトコフ音の聞き取り用ページを追加した。これは本銀血圧計のアニメーションに実際のコロトコフ音を音声データとして組み込み、スクリプトによる判定機能をつけて繰り返し測定値の評価ができるようにしたものである。この教材を臨地実習終了後の4年生に試用してもらった結果、自分の技術を確認する手段となったという意見を得た。また、看護学生の血圧測定の授業内で取り入れ教育効果を比較検討した。その結果、聞き取り能力はシミュレータを使った場合の方が実際の使用しなかった場合よりも正確な値を聞き取ることができており、その教育効果が確認されている。 これらの成果については2001年度の教育工学会で発表された。
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