聴診法による血圧測定法で得られるコロトコフ音は循環器系の様々な情報を内包しており、その波形パターンや周波数成分はそれらを反映していると考えられる。コロトコフ音は様々な循環器の状態を反映していくつかのパターンに分類できるとした報告もあるが、疾患との関係は充分明らかにされていない。そこで本年度はコロトコフ音の波形分析により臨床において簡便に健康状態をチェックする方法の開発を試みている。昨年度の聴音シミュレータの開発に引き続き、コロトコフ音のパターンの再現性と変動についての検証を行った。まず、採音時の聴診器による血管への圧力の違いがコロトコフ音の波形に影響するなど採音時の操作により変化することが明らかになったので、電子聴診器はサージカルテープ及びゴムバンドにて固定する方法を取り入れた。その結果をふまえ、安静時および軽い運動負荷をかけた状態に対して、コロトコフ音のパターンの再現性と変動についての実験を行った。健康な20代前半の女性を対象としたデータでは条件をそろえれば同一被験者に対してほぼ同様のパターンが得られた。解析の結果、連続測定により得られたそれぞれのデータのI〜V音に対応する最大振幅の平均を取り規格化することにより被験者に特有のパターンが抽出できることがわかった。同様に、運動負荷心電図に用いられるMASTER2階段法(Double:180sec.)による運度負荷直後のパターンを分析すると、一見スワン型ではなく平坦型のように変化した。これは、このとき収縮期血圧値の上昇がみられているため、心拍出量と血流量の増加により負荷前のパターンに比べ立ち上がりが早くなった結果と推測された。過去に報告されている各種のパターンも、わずかな負荷等に起因するズレの可能性が示唆された。これらの結果は平成15年3月の看護研究学会地方会(神戸)にて報告予定である。
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