障害のある子どもを養育する家族の発達と家族システムを明らかにすることを目的に、Grounded Theory Approachに基づく継続的比較分析を実施した。具体的な分析には木下(2003)の提唱している修正版(m-GTA)を用い、分析テーマを障害のある子どもと社会をつなぐ家族のプロセスとした。 対象者は、障害のある子どもの親36名(16組の両親と4名の母親)で、子どもは主に学童期の身体障害のある子どもであった。データ収集方法は、半構成的インタビュー法を用い、インタビュー内容を録音し、逐語録に起こしデータとした。倫理的配慮として事前に対象者に研究概要を説明し、プライバシーの保護や不利益を受けない権利等について保証し、了承を得てから研究を開始した。 本研究で見出されたカテゴリーは、《わが子の感解》、《障害をとりまく社会への現実志向》、《"うちの家族"の形成(再形成)》、《障害のある子どもと社会をつなぐ方略》の4カテゴリーであった。親は障害のある子どもを育てるなかで、徐々に【この子はこの子】と《わが子の感解》をし、《障害をとりまく社会への現実志向》をしながら、一方で《"うちの家族"の形成》を行っていた。本研究における《"うちの家族"の形成(再形成)》は、<父母の"わたし"としての自己のゆらぎ>、<父母の自己の編みなおし>、<家族の暮らしをつくる>のサブカテゴリーからなり、家族の暮らしをつくる前に、父親、母親それぞれが自己の揺らぎを体験し、【自己の問い直し】や、【自己の編みなおし】をしていくことが特徴であった。そしてこれらのプロセスの中で徐々に、親は子どもと社会の関係を捉え、《障害のある子どもと社会をつなぐ方略》を用いるようになっていた。親は子どもの障害を通して、子どもや社会、自己に向き合いながら"うちの家族"を形成し、"障害児"という特別な子どもをもつ特別な家族としてではなく、障害児もいる家族として社会に踏み出していることが明らかになった。
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