研究概要 |
本研究は、未熟児(低出生体重児)を出産した母親とその児を対象に、1)母親の妊娠中の状況、2)分娩時の状況と分娩が母親に及ぼした影響、3)未熟児を出産したことによる母親の身体・精神・社会的な症状、4)夫を中心とした家族関係と夫(父親)の行動や態度、5)児の発育・発達の経過が母子関係に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。 I.研究方法 調査対象は、岡山大学医学部・歯学部附属病院で出生した1,500g未満の低出生体重児とその母親とした。調査内容は、妊娠中の状況、分娩時の印象・感想、夫(父親)を中心とした家族関係、母親の出産後の身体・精神・社会的症状とその経過、児の発育・発達状態、母子関係等についてで、調査方法は半構成的面接法による聞き取り調査と直接観察法を用いた。調査期間は、平成13年5月〜平成17年2月である。 II.結果 今回、20事例について検討した。入院になった理由は前期破水と妊娠中毒症が多く、13事例(65.0%)が緊急搬送入院であった。帝王切開分娩の者は15人(75.0%)であった。1.出産後、母親の多くが「疲労感」「倦怠感」「憂鬱」などの症状を訴え、これは母親が受けたストレスの影響が考えられ、その症状が2か月以上も続く者がいた。2.母親になったと感じた者は皆無であち、初回面会時の母親の児に対する印象では、児に対して接近感情をもつ者は少なく、罪悪感をもつ者が多かった。3.児に接近感情をもつ時は、哺乳介助をした時、児と目があった時などであり、特に保育器から出た時や直接授乳開始後には、児への愛着が深まり面会行動にも影響があった。4.父親が無理解であったり非協力的な場合、母親は児に対して回避感情を抱きやすく、育児にも否定的な感情をもちやすい。5.児が退院後も、母親は児の発育・発達に関して過度の不安・心配を抱えている者が多い。過度に児に対して不安・心配をもつ場合、母親は児に対する回避感情や育児への否定的な感情をもちやすい。
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