本研究の目的は、抑うつ状態の患者の回復過程の認識を明らかにすることである。 方法:抑うつ状態で入院療養後退院した患者に対し、倫理的手続きを踏んだ上でインタビューを行い質的帰納的に分析した。解釈を偏りなく行うために研究者間と精神科経験のある看護職者で検討を繰り返し、患者にも分析結果を示し確認した。 結果及び考察:現場点での参加者は男性3名、女性7名の計10名。分析の結果、抑うつ状態患者の回復過程は"自分らしさの再形成"のプロセスであった。中心概念として《自己の主体性》が抽出された。第一段階:主体性が低下した<わからない自分>、第二段階:試行錯誤する<試す自分>、第三段階:主体的な<わかる自分>への変化が示された。回復過程の状態の認識として、4つのカテゴリー:<行動の変化><症状の変化><薬の効果><他者との相互作用>が抽出され、認識skillは<比較>や<時間>が見られた。行動は、できる・できないといった面から認識し、できるとはセルフケアや役割行動の自立を意味していた。<症状の変化>は身体と精神症状があり、悪化・改善の面から認識していた。<薬の効果>は症状に影響し状態の認識につながった。他患者・看護婦・医師・家族他などのく他者との相互作用>の中で認識が変化していた。病前と今の自分または他患者との<比較>をし、本来の自己を再形成していた。患者なりの<時間>的感覚を持っており、その時々で状態を認識し判断した上で療養生活を送っていたことが分かった。 分析結果から抑うつ状態の患者の主体性向上の時期を目安にアプローチすることが効果的ではないかと推察され、看護へのフィードバックにつながる意義ある研究成果を得た。以上の結果を平成13年度看護科学学会で発表した。今後は参加者を増やし、看護の認識についても分析を進めていく予定である。
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