平成13〜14年度の研究目的は、乳がん患者の術式意思決定の軌跡と、その影響要因を明らかにすることであった。患者18名に参加観察と面接と並行して継続的な比較分析を行った。 1)乳がん患者の手術意思決定の軌跡 患者は、がんと手術適応の決定を受けて、大きな心理的衝撃を体験していた。その衝撃から患者は、「感情とのつきあい」「情報とのつきあい」「人とのつきあい」である《つきあい》コーピングを用いて、『現実との対峙』を図りながら意思決定していた。意思決定は、「個人の価値・事情」と「医学基準」に基づいていた。意思決定パターンは、「自分の希望通りの術式を受けた」「自分の希望がなく医師から提示された術式を受けた」「自分の希望と受けた術式が一致しなかった」であった。 2)乳がん手術患者の意思決定に影響を及ぼす要因 患者側の要因は態度・知識・能力であり、「環境要因」は医療者側の情報提供のしくみとソーシャルサポートのしくみであった。 3)《つきあい》と要因との関係 自己の意思を明確にもち、情報処理能力があり、闘病に情報が重要であると認識していた者は、意思決定が積極的で能動的であった。一方、自分の意思・感情を抑える、医師の判断に委ねる、情報に対する価値判断ができない、情報処理能力が欠如している、情報が不安を強くするという認識は、意思決定を消極的で受身的なものにしていた。それには医療者との関わりも影響していた 本研究結果は、第22回日本看護科学学会、第17回日本がん看護学会、First International Conference Japanese Society of Cancer Nursingで発表した。今後、これらの結果から看護を抽出し、臨床で実践しながら有効性について検討していく予定である。
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