平成15年度の研究目的は、グランデット・セオリー法による継続的な比較分析を行い、研究結果を学会で発表し、論文の投稿によって結果の妥当性を検証することであった。 1)乳がん患者の術式意思決定とソーシャルサポート ソーシャルサポートのしくみ:ソーシャルサポートには、対象が選択肢を考える際の情報を提供し、情緒的な支えになった<意思決定を支えるサポート>と、相反する<ストレスフルなサポート>があった。それらはソーシャルサポートの資源であるネットワークに特徴があった。<意思決定を支えるサポート>は、夫:「情報の入手を助ける」「意思の明確化を助ける」「孤独を癒す」、母親・姉妹・友人:「気持ちを受け止める」、娘や息子:「生きる意欲を引き出す」「意思の明確化を助ける」、同病者:「意思の明確化を助ける」「病気との向き合い方を示す」「自己決定の責任を自覚させる」「気持ちを癒す」、同僚:「仕事を調整する」「早期治療を勧める」であった。<ストレスフルなサポート>は、夫:「意思を代行する」「危機感に近づけない」、父親「意思を代行する」、同病者:「価値観を押しつける」「過度に干渉する」という現象がみられた。また、患者ががんを身近なものに隠したい場合には<サポートを求めない>、身近に信頼できるネットワークがない状況では<サポートがない>が抽出された。以上の結果から、看護師はネットワークによる患者への影響を適切にアセスメントし、ネットワークを含めた介入の必要性が示唆された。 2)乳がん患者の術式意思決定に関する記述的研究-心理的衝撃をうみだした情報と方略 本テーマで論文を執筆し、日本がん看護学会誌に投稿し査読中である。論文の作成過程で質的研究の専門家による指摘を受け、新たな知見を得ることができた。乳がん患者の術式意思決定を促進する看護として、意思決定に関する患者の希望を確認し、患者個々の対処能力、環境に応じた支援が示唆された。
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