精神障害者の社会参加への自信を育む要因を研究テーマとし、3ヵ年の研究過程は以下のとおりである。 13年度 「社会参加」と「自信・自己効力感」という2つの研究における重要概念をキーワードとし、文献検討を精力的に行った。その結果、「社会参加」に関しては、障害者および精神障害者など障害者のノーマライゼーションの理念のもと「社会参加」が当事者の主体性を尊重しながらどのように実現できるのか、リハビリテーションの目的として「社会参加」の概念が昨今注目されているが、その概念規定はあいまいであることがわかった。次に「自信・自己効力感」の概念に関しては、糖尿病の自己管理など身体疾患の闘病生活において、患者が症状や療養生活を自分でコントロールし生活していくことができるという自信など患者教育の視点から注目されている概念であり、同じく慢性疾患であり長く障害とどう付き合うかが問われている精神障害者にあっても自己効力感をひとつの指標とした研究が今後更になされる必要性が判明した。このような文献検討結果を元に、研究計画を実現可能なものに練り直し、質問紙やインタビューガイドを整え、協力していただける研究フィールドの開拓を行った。 14年度 調査を具体的に実施した。14年度の前半には、福祉工場で働く精神障害者6名を対象に調査を実施した。その結果を踏まえおおよその傾向を念頭に置きつつ、14年度の後半には都内のデイケアに通う精神障害者を対象として、研究データの収集を行った。 15年度 14年度に行った研究結果について分析した。精神障害者の社会参加への自信を育む要因として、第一に重要な要因は、精神障害者の周囲にいる人が精神障害のあるその人の存在を認め、尊重する態度を示すことだった。このような暖かな他者のかかわりという要因が、精神障害者に影響をおよぼし、精神障害者自身が否定的な自己の見方から自己肯定感が持てるようになることにつながっていた。 このような研究成果を2学会において演題発表を行ったところ、多くの聴衆から、研究の独自性やその現場における重要性からか興味深い意見が出された。それらを更に検討し、その結果、最終的な研究論文の作成に生かしていくことが今後の課題と考える。
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