研究概要 |
この研究の目的は,小児医療の現場における子どもへのインフォームド・コンセントの課題と改善策を見いだすことである.研究の初年度にあたる今年は,日本で実際に医師が子どもに面談をする場のデータを6例収集するとともに,医療者(医師,ナース)がどのような考えを基にどう子どもに関わっているのかについて11例,実際に病名を含めた説明を受けた子ども本人がどう考えているのかについて14例からの聞き取り調査をおこなった.また,次年度からの調査のための下調べをアメリカでおこない,3名の医師から聞き取り調査をおこなった. 日本で収集したデータを分析した結果から,子どもへのインフォームド・コンセントが重要であると考えている医師であっても,必ずしも子どもが理解できるような説明ができているとは言い難く,ナースとの協力体制がとれていないために,説明後のサポートが不十分な状況にある施設もあることがわかった.また,子ども自身は一般に医療者が心配することとは裏腹に,病名自体を聞いたことでショックを受けることは少なく,むしろ入院期間が長いこと,抗がん剤の副作用で要望が変化することの方が問題であること,加えて,本当の病名を含めた説明を本人にすることが,兄弟や子どもの戻る学校の友だちにまで説明することにつながる場合が多く,それによって子どもが学校の友達と関係を維持しやすくなることがわかった. また,アメリカのデータからは,医師によってassentと呼ばれるインフォームド・コンセントをうける対象となる8,10歳(施設や州によって異なる)から18歳までの子どもたちにどう説明するかが異なっていることが問題となっていることが示唆された. 次年度以降,さらにデータ数を増やして分析を続ける予定である.
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