本研究では、まず、分娩時に会陰切開術を受けた褥婦と第2度会陰裂傷を生じ、会陰縫合術を受けた褥婦の後遺症(産後の創部痛や生活上の支障)に差があるのかどうかを明らかにするために初産婦165名(研究結果をより明らかにするためのコントロール群としての第1度裂傷群を含む)を対象とした自記式質問紙による縦断的調査を行った。その結果、第1度裂傷群と切開群の後遺症の比較では、第1度裂傷群のほうが軽度であること、第1度裂傷群と第2度裂傷群間、および第2度裂傷群と切開群間では有意な差はなく、少なくとも第2度裂傷群は切開群より重度の後遺症とはならないことが明らかとなった。 複数のSystematic reviewから、会陰切開術を行わない場合より行った時のほうが第3、4度裂傷の発生頻度が高いことが報告されていることや前述の結果より、会陰切開術は急墜分娩が必要な場合に限定し、切開を行わない場合に発生する裂傷もできるだけ軽度となるような方策を検討することが必要であると考えられる。 そして、現在、諸外国では、分娩時の会陰損傷を予防する方策として、妊娠中に行う会陰の自己マッサージが注目されており、複数の研究結果で、初産婦に効果があると報告されている。このような現状から、助産師が分娩第2期に会陰保護術を施行する日本の一般的状況下で、妊娠中に行う会陰マッサージに効果があるのかどうかを明らかにすることを目的に、総合病院産婦人科病棟にて、研究参加に同意が得られた初産婦(65名)をマッサージ施行(介入)群と対照群に無作為に割り付け(分娩介助を行う助産師にその割り付け結果は知らせず)、介入群に対して自己マッサージ法を指導した。その結果、介入群は会陰切開施行率が有意に低く、マッサージの効果が認められた。
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