前年度までに実施した救急初療現場における看護ケアの参加観察、および面接データを分析し、まとめを行った。実際行われていた看護ケアは、8のカテゴリーと37のサブカテゴリーに分けることができた。これらの看護ケアは、看護者からの主体的・積極的な患者への関わりと医療チーム内における訓練されたスタッフの連携によって実施されていた。この看護ケアを提供するためには、熟練した経験的知識や技術が必要不可欠であり、そのケアの背景には、特別な環境と時間要因が関与していることが特徴であると考える。救急初療における看護ケアは、大きくは2つに分けられる。直接的看護ケアは、【蘇生】【静かに見守る】【変化を予測しながら身体機能の保護と悪化防止】【安全を保証しながら現状認知を繰り返し促す】【直ぐ側で、常に注意を向ける】【今後の成り行き説明】である。また間接的看護ケアは、【確実な情報の集約と公開】【効果、および効率促進のための環境調整】であった。 直接的看護ケアは、単独で実施されることなく、患者の状況に合わせてそれぞれが複合的に絡み合い、いくつかのケアが同時に、且つ連続して提供されていた。間接的看護ケアは、直接的看護ケアを周囲から支え、患者個々の様相や流動的な個別情報を整理し、それをチーム内で公開することで患者の理解を助け、また患者へのケア提供環境を整備・調整するものである。様々なレベルの患者と情報の存在によって、特殊で複雑な環境(雰囲気)を形成し、患者の特徴から時間の影響をも受ける。これらの看護ケアは、患者の成り行きを予測し、見通しを立てながら行動するという、豊富な経験に裏付けられたケアの統合である。また、患者に現れている反応に対処しながら、身体に起こった原因(問題)を明らかにし、その解決のための方向性を導き出すまでの関わりであり、それは生命と機能を維持し、今後の方向性を決定するためのプロセスであった。
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