【研究目的】ビタミンKの経胎盤的補給の観点から、妊娠中の受動喫煙が臍帯血中のビタミンK依存性凝固因子活性の変動にどのように反映されるか明らかにするとともに、受動喫煙妊婦のビタミンK含有食品摂取が新生児の出血予防にもたらす効果について検討することを目的とした。【研究方法】対象:非喫煙者である経膣分娩産婦148名(受動喫煙群53名、非受動喫煙群95名)。研究の趣旨等を文書と口頭にて説明し同意を得た。児娩出後、臍帯静脈より採血して得られたクエン酸加血漿を用い、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、ヘパプラスチンテスト(HPT)、トロンボテスト(TT)、ビタミンK依存性凝固因子活性(FII、FVII、FIX、FX)およびビタミンKに依存しない凝固因子活性(FV、FVIII、FXI、FXH)を求めた。また、若林ら(日薬理誌116)のHPLC-白金還元・電気化学検出法に準じ、臍帯血のビタミンK類測定法を検討した。【結果・考察】1)受動喫煙群は非受動喫煙群に比し、FVII、FIXが有意に低値を示した。2)FV、FVIH、FXI、FXHには受動喫煙の有無による有意差は認められなかった。3)納豆摂取の有無により、受動喫煙群と非受動喫煙群を比較すると、非摂取群問では受動喫煙群より非受動喫煙群のFVIIが有意に高く、摂取群間では両群に有意差は認められなかった。4)ブロッコリー摂取の有無により、受動喫煙群と非受動喫煙群を比較すると、非摂取群問では受動喫煙群よりも非受動喫煙群のTT値が有意に高く、摂取群間では両群に有意差は認められなかった。5)ビタミンK類の測定条件、試料の前処理方法を検討した。受動喫煙回避が困難な妊婦の場合、ビタミンK含有食品の積極的な摂取により胎児血中のビタミンK依存性凝固因子活性を改善し、早期新生児の出血予防の手段となり得るものと考えられた。今後、臍帯血中ビタミンK類濃度の詳細な検討に向け、測定法の再現性・安定性を高めることが課題である。
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