研究概要 |
本研究では,施設厚生省健康政策研究会編「病院要覧2001-2002」に記載されている産婦人科の標榜があった300床以上の病院890施設に対してDonabedianの質評価の枠組みに基づくアンケート調査を行った。 調査内容は,対象者別の2種類の調査票から構成され,調査項目はプロセス因子・アウトカム因子・構造因子に分類した。質保証とプライシングに関する調査内容は,看護管理者を対象に,(1)設置主体,病院のタイプなどの施設特性,(2)産科外来に配置される職員数,健診の形態,保健指導の1形態,(3)アウトカムとしての妊婦健診費用概算についての調査。産科診療科を管理する看護師長に対して,(1)病棟のタイプ,病床数などの病棟の特性,(2)病棟に配置される職員数,人員配置,通常の分娩管理体制,(3)年間・月間産科統計,病棟の人件費,入院費用および分娩費用などの財務的な特性について調査を行った。回収347施設(39.0%)中,有効回答数332施設(37.3%)であった。 結果,妊婦健診の総費用の平均は,70,315円で,10,000〜300,000円までの幅がみられたが,その要因を迫求するために,関係すると考えられる調査項目について重回帰分析や多変量解析を行ったが,人件費に関連する外来医師,看護職員数及びサービスに関連する診療の形態,保健指導の形態や頻度の項目はなんら影響を及ぼしていなかった。分娩による入院時の総費用の平均は,352,782円で,その幅は210,000〜900,000円であった。 総入院費用の違いをみると,民間病院が国公立病院や大学病院と比較すると有意に高く,分娩費用と相関することが明らかとなった。しかし,費用自体の決定要因がどこにあるのか,医師・看護職者数,看護単位などの人件費や母子の安全に関連する産婦ケアサービスの内容,胎児管理ケアの実態などの関係を統計的に分析したが関連性はみられなかった。 今回の結果から,妊娠・分娩に関わる費用は,設置主体で差があることがわかったが,人的資源の投入量やサービスの投入量・密度と関係なく設定されていることが判明した。結局,プライシングの決定要因はその施設ごとの判断で異なっていた。妊産婦ケアサービスの原価を詳細に試算することは難しいが,これからはサービスや安全,質保証の観点から原価計算や配賦法などが検討されプライシングが標準化された上で,差別化していくことが必要であり,そこからより質の高い妊産婦サービスが提供されると考える。
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