研究概要 |
変性性神経疾患患者の病気に関連する生活上の困難、受けとめ、対処の関連を明らかにする目的で、昨年度のALS患者に引き続き、今年度はパーキンソン病患者を対象に郵送調査を実施した。使用尺度は(1)Mishelの病気の不確かさの尺度(コミュニティ版)、(2)尾関のコーピング尺度、(3)川南他の難病患者に共通の主観的QOL尺度であった。加えて、研究班が平成13年度の質的研究をもとに作成した2つの質問紙「受けとめ;24項目」と「対処;25項目」についても調査した。 回収率は42.7%、有効回答は152名(91.5%)であった。対象者は女性が51.3%、平均年齢が68.75±7.61、平均罹病期間は12.11±8.48年、無職の人が90.1%とほとんどを占めていた。病期はH&Y-IVが36.2%で最も多く、次にIIIが35.5%であった。wearing-off現象がある33.6%、on-off現象がある31.6%であった。 使用した3尺度の関連はSpearmanの順位相関係数でみた。不確かさと主観的QOLの「受容」とに負の相関があり、病気や治療に関する不確かさが高い人では「受容」が低かった。また、主観的QOL総得点と積極的コーピングの一つである「情動焦点型コーピング」とに正の相関があり、現状を肯定的に捉える努力をしている人では主観的QOLが高かった。その他、主観的QOLには日内変動や家族以外の人との交流が関係しており、日内変動のある群や、交流が減少した群ではQOL得点が有意に低かった。独自に作成した質問「受けとめ」「対処」について、項目平均が高いものを3つ挙げると、「受けとめ」では[この病気になってみないと自分の気持ちはわからない][身体の動きが思うようにコントロールできない][体力と気力が弱ってきている]であり、「対処」では[自分でできることは自分でする][病気とうまく付き合っていこうと思っている][体をうごかすように心がけている]であり、パーキンソン病患者では、不安定な状況に翻弄されながらも、病気と付き合っていこうと懸命に対処していることがうかがえた。 以上のことから,パーキンソン病患者の主観的QOLの向上には身体的な安定,他者との交流,不確かさの軽減,積極的・肯定的な対処が必要であることが明らかになった.そのため医療従事者は患者が理解し納得できるような説明と,患者が現在の状況をありのままに受け止め意味を見出せるようにかかわる必要性が示唆された。
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