本研究の最終年度である今年は、以下の3点について調査を行った。 1.外来で化学療法を受けている術後乳がん患者の情報ニードと情報探求行動(継続) 13名から得られたデータを質的帰納的に分析した結果、患者が必要としていた情報は[私自身が受けている治療]や[治療の見通し][治療効果][副作用対策]などであった。一方、情報を単なる知識として伝えるだけでなく[ありのままを伝える]や[希望を伝える][face to faceで伝える]など、情報の伝え方にも強いニードを示した。 2.初期治療段階にある術後乳がん患者の情報ニードの分析 11名の術後6ヵ月未満の患者からデータ分析から、特に患者が情報を必要としている時期は、がんの診断が伝えられたときと術式選択の時であった。また、ありのままを伝える医師の姿勢がその後の医師-患者関係の信頼関係の基盤となっていることが示唆された。 3.造血細胞移植患者の情報ニードと情報探求行動の分析-移植前に焦点をあてて- 対象者が少ないため、事例分析を進めている。40代男性の分析から、移植の自己決定に向けて、[移植のメリット・リスク][移植後の生活への影響][移植実施に関する情報]などが重要な情報ニードとなっていた。このために、インターネットを駆使したり医師に尋ねるなど[主体的な情報探求]を行い、自分の考えや気持ちの整理を行っていた。 以上より、がん患者のセルフケア促進のために情報提供が重要な鍵となっていることが示唆された。今後、がん患者の状況に適した情報提供方法の確立にむけた研究が必要である。
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