本研究の目的は、消化器癌手術後の社会復帰過程における患者とその家族員の困難および受けた看護についての体験を明らかにすることである。都市部の中核病院で病名を告知されて手術を受け、1年以上の予定で継続治療が開始され、術後の3時期に該当し、終末期でない成人がん患者とその家族員で、本研究に同意の得られた者を対象に、倫理的配慮を行って、患者とその家族員の属性、がん手術後の社会復帰についての考え、退院後治療を継続しながら社会復帰することの困難、看護職者との関わりの体験について、半構成的面接法と記録調査により調査した。術後の3時期とは、退院後初回から数回目の外来受診時、術後2〜3年目の受診時、術後5年目以上の受診時をいう。分析は質的、帰納的な方法で行った。 その結果、(1)対象は、がん患者24名と家族員14名の計38名であった。患者の内訳は、男性18名と女性6名で、平均年齢は57.6歳であった。家族形態は、核家族13名、夫婦のみ10名、独身1名であった。家族員の内訳は、男性2名と女性12名で、平均年齢は56.1歳であり、患者との続柄は、全て配偶者であった。平均面接時間数は、患者50.0分、家族員37.3分であった。(2)がん手術後の社会復帰過程における患者の困難の体験は「癌との共存の手だてを見いだす」と「自らの立場と役割を見据えて自分の人生を生きる」の2つに集約された、(3)家族員の困難の体験は、「支援者として癌と共存する手だてを見いだす」と「がん患者を抱える家族員としての立場と役割を見据えて自分の人生を生きる」の2つに集約された。(4)看護職者との関わりの体験では、ほとんどの患者・家族員が肯定的な印象をもっていた。相談できない、術後の指導が個人に合っていない、術後のフォローアップがない、という者が数名いた。 次年度は、この研究結果を踏まえて、外来援助方法のモデル作成を行う予定である。
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