本年度は、インタビューに向けての事前調査を行った。本研究のデータ収集は、半構成的インタビュー法にて行うため、インタビューを行う研究者自身の知識洞察が、データに大きく影響を及ぼす。そこで、本年度は、外国における治療・看護の場、薬物依存症リハビリセンター(大阪市内)でのフィールドワーク、ある民間精神病院(大阪府下)での薬物依存症者の入退院状況の調査を通して、インタビューに向けての知見を得た。 1.外国における薬物依存症治療・看護の現状調査 日本同様に薬物に対しハームリダクションをとっていない、かつ日本以上に薬物依存問題が大きく報告されている次の2カ国で、現状調査を行った。いずれにおいても、アルコールなどの合法薬物であれ、違法薬物であれ、依存症として同様の治療・リハビリシステムがもうけられていた。しかし、薬物問題の背景には違いがあり、入院期間中の看護や、治療システムの詳細には違いが見られた。日本の現状とも違いがあり、他の国の現状から学ぶとともに、日本の現状を踏まえた回復へのシステムが必要であろう。 (1)ブラジル連邦共和国サンパウロ州サンパウロ市の現状 (2)アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストンの現状 2.大阪における薬物依存症リハビリセンターでの現状 回復支援者としての立場で、フィールドに参加している。インフォーマル・インタビューを通して、回復においては、治療的枠組みより、治療施設内での人と人との関係のあり方が影響しているかと思われるが、これは今後のインタビュー調査において追究が必要である。 3.ある民間精神病院での薬物依存症者の入退院状況 過去3年間のデータを分析し、入退院の状況を明らかにした。その結果、使用薬物により入退院の状況や、推測される看護上の問題には違いがあった。そのような違いを、薬物依存症者や看護者はどのように体験しているのであろうか、今後のインタビュー調査において追究が必要である。
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