本研究の目的は、薬物依存症者の回復における入院期間中の看護に意義について、入院体験を有する薬物体存症と看護者双方の語りを通して、明らかにすることである。平成13年度は、近隣地区や海外での依存症回復支援の現状調査を行った。平成14年度には、薬物依存症者(16名)へのインタビュー行い、入院期間中の看護の意味について考察した。そして、平成15年度は、平成14年度に得られたデータの分析をさらに深めるとともに、薬物依存症者の看護を経験したことのある看護者(12人)に、その看護の体験についてインタビューを行った。 以上のような経過から、本年度新たに得た知見を次の2項目に分けて述べる。 1.薬物依存症者にとっての入院体験:入院体験が1回のみの者では、「入院体験は現実感を伴わない傾向」にあり、依存症と向き合うことはなかった。複数回の入院体験を有する者でも、最初の入院は入院体験が1回の者と同様の傾向があった。しかし、自助グループやリハビリテーショシ施設との出会いがきっかけとなり、依存症と向き合うようになり、それ以後の入院体験では、回復に向けての意味が見出せる傾向にあった。 2.看護者にとっての薬物依存症者への看護の体験:薬物依存症者への看護は、「難しい」と表現されることが多かった。その難しさには、依存症者の寂しさや孤立感への共感が、看護者に苦痛をもたらしてていると推測された。また、看護チームへの感情も影響していると推測された。
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