本研究プロジェクトでは、課題にある表記のシーボルト・データ、間データ、天文方データのおのおのについて、デジタイズなどの処理を展開し成功した。シーボルトデータについては、東京都立大学・理学部・地理学科の三上研究室、およびオランダ気象庁の気象研究官ギュンター・コンネン博士らとの協力により、塚原らの処理にかかるデータの検証がおこなわれ、アメリカ気象学会誌(Journal of Climate)および日本地理学会誌(『地理学研究』)に共著の報告をおこなった。また科研報告書には間データのデジタイズ結果を掲載している。 さらにこれらのデータを科学的に検証するうえで、都立大学・財城真寿美氏および神戸大学・中津正哉氏の協力を得て、さまざまなデータの補正加工についても検討をおこなった。ここれおこなわれたのは、気温と気圧についての1)重力補正、2)重力補正、3)海面補正、4)データの均質化(ホモジェナイゼーション)などで、気温については高度補正、平均値計算法の違いなどを考慮にいれたもの、また気圧についてはヘクト・パスカルに単位を統一したものや、それにさらに温度補正を加えたもの、またそのうえに平均値の計算方法の違いを考慮したものなどを出してみて、これら歴史的データの扱いについての検討をおこなった。 本研究計画の成果については、機会をとらえて多くの学会などでの発表をおこい、またさまざまなメディアに報告を寄せた。なかでも気候変動の文化的・歴史的な意味については、『現代思想』誌上に、「自然の再侵襲:機構変動が示唆すること」という論文を発表し、また科学技術者化異論学会では、「地球温暖化問題の科学史的・PNS的考察」という口頭発表をおこなった。 神戸では2003年に歴史気象学の国際シンポジウムが企画され、本計画と共同での活発な議論に寄与した。海外ではシンガポールで開催されたアジア学会での口頭発表をおこない、世界的に注目を集めるものとなった。
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