この研究の目的は、日本における人工投石技術の開発利用の推移について、国際比較の観点を重視しつつ、社会史的な見取り図を描くことである。将来的には、このパイロットスタディーを土台として、医療関係者を巻き込んだ共同研究に発展させたいと考えている。 本年度は3年間の研究期間の初年度に当たる。人工透析医療の予備的な実態調査と、内外の文献・資料の調査及び収集を中心として、研究を進めた。 実態調査に関しては、神奈川県川崎市の虎の門病院分院と、スイスのジュネーブ市のCentre de Dialyseを訪問し、とくに衛生管理の観点から、比較観察を試みた。日本では透析患者の肝炎への感染率が高いという統計データが出ているが、その差の原因については、日本の肝炎患者の人口比の高さと、透析クリニックの衛生管理の不十分さが指摘されている。後者について比較観察を行った。今後は他国の状況も調べ、総合的な所見を出したい。 内外の文献・資料の調査及び収集については、日本透析医学会の年会に出席して調査を行うとともに、同学会が毎年集計している統計資料(全14巻)を検討した。なお人工透析医療は総合医療であり、また医療政策との関連も深いため、幅広く関連領域の調査を行った。なかでも医療制度改革について、とくに定額制の導入の動きに注目して、分析を進めた。そのさい生活習慣病の概念が果たす役割について批判的検討を行った。またゲノムテクノロジー及び環境ホルモン問題と人工透析医療との関係についても調査を行った。
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