・サンクト・ペテルブルグ大学の設立に関する近年の論争に関する資料の収集を行い、1725年に主としてドイツ人学者を招聘して創設されたサンクト・ペテルブルグ科学アカデミー(および同附属大学、附属ギムナジア)と同大学との継承関係について検討を行った。これは、従来1819年創立とされてきた同大学の設立年代をほぼ1世紀遡らせるものであり、1755年に設立されロシア最初の大学としての地位を誇ってきたモスクワ大学とのあいだで激しい論争を呼んでいるものである。 ・11月にサンクト・ペテルブルグ大学を訪問し、1980年代以来上記事項について継承説をはじめて提唱した同大学ティーシキン教授との研究交流を行うとともに、サンクト・ペテルブルグ大学史に関する同大学史博物館研究員オクサーナ・ヴァフロメーエヴァの学位請求論文審査会に出席した。 ・上記論争とも関連して、モスクワ大学史に関する資料収集を行い、創立初期の同大学における外国人学者の位置と役割についての研究を開始した。 ・1月初旬にフィンランド共和国ヘルシンキ大学を訪問し、同大学図書館および同大学史博物館においてフィンランド大公国時代の同大学の歴史について資料収集を行った。この大学は、ロシア帝国支配下にありながら帝国の大学システムとは別系統におかれて他大学にはない自治を保証された大学であるが、同時に現在のエストニア共和国タルト大学とともにロシアと西欧的科学との接点におかれた大学であり、とりわけロシア人の女子高等教育の場としても機能した大学であった。この点について、別記著書において詳述した。 ・あわせてエストニア共和国に出張して、科学アカデミー図書館などで資料収集を行った。
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