(1)ドイツの哲学者ライプニッツによるサンクト・ペテルブルグ科学アカデミー設立への関与について明らかにするために、ライプニッツとピョートル大帝との関係を示す史料の発掘を行った。さらに、ライプニッツがピョートルにあてて書き送った4通の書簡のデータ化と仮訳の作成をおこうとともに、その歴史的位置づけに関するいくつかの先行研究の検討を行った。その際、従来日本のライプニッツ研究では軽視されてきたライプニッツの政治性について着目するとともに、ライプニッツの普遍学構想との関連にも留意した。こうした成果は、『研究成果報告書』の第3章としてまとめた。 (2)ロシア帝国における「外国人学者」問題をめぐってはエスニックなロシア人ではない帝国臣民の学者の存在が無視しえないことを前年度までの研究のなかで明らかにしてきたが、そうした非ロシア人の支配する空間における学術・教育体制をロシア帝国論的な視点から明らかにして、論文「帝国とネイションと学校」としてまとめた。 (3)本研究に付随して、外国との相互交流のなかで前進した医学・医療分野における女性の活躍についても注目し、スイスのチューリヒ大学における最初の女性医学博士の誕生(ロシア人女性ナデージダ・スースロヴァ)に端を発した女性医師養成機関の成立から閉鎖にいたる経緯を明らかにする研究も行った。これは論文「女性医師課程の誕生と消滅-帝制期ロシアにおける女性医師と医学教育-」としてまとめた。
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