本研究の目的は、動脈硬化の予防に及ぼす運動習慣の影響を検討することにある。そのためにはまず、動脈硬化の定量的かつ信頼性の高い評価方法の確立や装置の開発が必要となる。そこで平成13年度および平成14年度においては、超音波ドップラー装置および超音波エコー装置を用い、血管局所の脈波伝播速度を高精度に測定する装置開発を行ってきた。平成14年度における取組内容とその成果については以下の通りである。 (1)平成13年度において超音波ドップラー装置(林電気DVM-4300)を2チャンネル同時測定用に改良し、2点で測定した流速波形間の位相差から脈波伝播速度を測定・解析するシステムを開発したが、本年度はこの装置を用い、総動脈上の2cm離れた2点間、総頸動脈-大腿動脈間、大腿動脈-頸骨動脈間の3箇所の脈波伝播速度を男子学生、中年男性を対象として測定を行った。その結果、総頸動脈-大腿動脈間、大腿動脈-頚骨動脈間には両群あいだに有意の差があることを明らかにし、方法論の有効性を実証した。 (2)(1)で開発した装置を用い、2点で測定されたドップラー信号間の周波数伝達関数、コヒーレンス関数から脈波伝播速度を解析するシステムの開発を行った。しかしながら、総頸動脈および橈骨動脈を対象として測定した結果では、データが不安定で、信頼性の高い結果を得るに至っていない。 (3)超音波エコー装置を改良し、総頸動脈上の2cm離れた2点の血管壁変動の位相差から脈波伝播速度を測定する装置と解析ツールの開発を完了した。すでに人工拍動流装置(ファントム)を用いた精度検証実験を行い、理想的な条件下では信頼性の高い結果を得ている。しかしながらヒトを対象とした実験では、プローブ操作やノイズなどの問題もあり、改善策を検討中にある(これに関する研究成果は本学紀要に掲載)。
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