健康な50歳代、60歳代、70歳代の男性を被検者(あらかじめ実験内容を説明して実験に参加することに同意を得ている)に用いて、最大努力、最大努力の80%、量大努力の60%の筋力で膝関節の屈曲および伸展運動を24週間にわたり負荷した。運動には、研究室で独自に開発した運動装置を用いた。1週間に1度、最大努力での屈曲および伸展時の筋力を、また、運動開始時と終了時に骨密度(大腿骨)を測定した。運動開始前は、運動強度に関係なく70歳代の最大筋力は50歳代と60歳代の最大筋力よりも有意に低い値を示した。運動終了後は、量大努力の60%および80%の筋力で運動を行った60歳代のグループは70歳代のグループに対して有意に大きな最大筋力を示した(平成13年度研究実績)。一方、最大努力で運動を行ったグループの60歳代と70歳台の最大筋力に違いはみられなかった(平成14年度研究実績)。これは、高齢期でも最大努力での運動に効果が認められることを示している。骨密度については、運動開始前および運動終了後のいずれにおいても50歳代、60歳代、70歳代で違いがみられなかった(平成13年度および14年度研究実績)。 高齢期の実験動物(老化促進モデルマウス)に高強度で自発走運動を負荷して、骨格筋(ヒラメ筋、前脛骨筋、足底筋)および骨(大腿骨)密度に及ぼす影響を検討した。20週間における運動によって老化に伴う筋萎縮は抑制された(平成14年度研究実績)。さらに、老化による骨密度の低下を運動により抑制できた。これらの結果より、負荷する運動強度の違いによって高齢期の筋力維持に差異が認められ、運動強度が高い場合には高齢期の筋萎縮や骨の脆弱化を抑制することが可能であることが明らかになった。
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