本研究では、13年および14年度の2年間で人による物体精密把握浬動での運動手の左右差および運動準備期と運動実行期の差異を脳活動の観点から解明することを目的とした。本年度は、実験参加に同意の得られた9名の被験者について、大阪大学医学部付属病院内のポジトロン脳局所血流測定装置(PET)を使用して、以下の5実験条件でのデータの収集を行った。条件は、(1)右手での把握運動準備のみ、(2)左手での把握運動準備のみ、(3)右手での把握運動の実施、(4)左手での把握運動の実施、(5)安静、であった。PET測定と同時に運動中の手および腕の筋活動、把握物体への力作用なども測定した。また、それぞれのデータの解析も行った。その結果、運動肢の左右差は、運動肢と対側の半球での運動関連脳領域および大脳基底核、視床、小脳、さらに同側の小脳での活動の強さ、または活動領域の広さに反映することが明らかとなった。従って、運動の実行に関わる脳機能は運動肢の左右差を反映することが判明した。運働準備と運動実行の差については、運動準備期に左半球の補足運動野が運動する手の左右差に関わらず血流が高まっているが、実行期には運動肢と対側の運動関連領域(主運動野、運動前野、補足運動野、主感覚野)での活動が優意となることが分かった。これは随意運動における各領域での活動の時間的な流れについて示しているものと考えられる。これらの研究成果の一部は、13年7月に開催された第17回バイオメカニズムシンポジューム(新潟)、および14年2月に米国、ネバダ大学開催された第1回Biomechanics invitational Seminarにて公表した。
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