研究概要 |
本研究では,N-acethylcysteine(NAC)による筋疲労軽減効果が,筋小胞体(SR)の機能の変化を介したものであるか否かを検討することを目的とした.実験にはラットの横隔膜を用い,コントロール(C)群はリンガー液中で,実験(E)群はNACを含むリンガー液中で,電気刺激により収縮を誘因した.実験は2つからなり,実験1では両群に張力が初期値の20%に低下するまで,また実験2では,C群には初期値の20%に低下するまで,E群にはC群が20%にまで低下するのに要した時間収縮を行わせた.その後SRの機能を測定し,以下の結果を得た. 1.実験1において張力が初期値の20%に低下するまでの時間は,C群と比べE群で有意に長いことが認められた.実験2では,収縮開始60秒以降,E群における張力はC群と比べ有意な高値が観察された. 2.実験1では,SRCa^<2+>取り込み速度および放出速度ともに,安静時に対して収縮終了時では,両群に有意な低値が認められた.しかしながら,収縮終了時におけるC群とE群との値には,どちらのパラメーターにおいても有意な差異は示されなかった. 3.実験2においても,取り込み速度および放出速度に収縮による低下はみられたが,収縮終了時においてC群とE群との間に有意な違いは認められなかった. 以上の結果から,疲労の要因の1つに酸化が関与しているが,本研究で用いた実験モデルにおいては,その影響はSRよりも他の器官に対して大きいか,あるいはNACではその影響を抑制できないほど大きく修飾されているかのどちらかであることが示唆された.
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