研究概要 |
実験1では,筋疲労に伴う筋小胞体(sarcoplasmic reticulum ; SR)のCa^<2+>取り込み能力の低下の原因が,SR Ca^<2+>-ATPaseタンパクが酸化されることにあるか否かについて検討することを目的として,ラットに5〜7分で疲労困憊に至るランニング運動を行わせ,外側広筋および腓腹筋表層部を対象に測定を行い,以下の結果を得た. 1.運動により,SR Ca^<2+>-ATPase活性に16%,SR Ca^<2+>取り込み速度に34%の低下が認められた. 2.運動により,SR Ca^<2+>-ATPaseタンパクに含まれるカルボニル基の量は2.27倍に増加した. 実験2では,抗酸化剤であるN-acetylcysteine(NAC)が,収縮中の筋力およびSRの機能に及ぼす影響を検討することを目的として,ラットの横隔膜を電気刺激により,種々の時間収縮させた後SRの機能を測定し,以下の結果を得た. 1.張力が初期値に対して20%にまで減少した場合,SRの機能の低減率は,NACによって抑制されなかった. 2.張力が初期値に対して80〜50%に減少した局面では,SRの機能の低減率は,NACによって抑制された. 以上の結果から,1)SR Ca^<2+>-ATPaseタンパクが酸化されることが,筋収縮に伴うSRのCa^<2+>取り込み能力の低下の原因の1つであること,および2)抗酸化能力を予め高めておくことによる筋疲労の軽減効果に,疲労の中期ではSRの機能の変化の程度が関与していることが示唆された.
|