研究概要 |
平成13年度は、自転車駆動運動による1)漸増負荷運動、2)換気閾値(100%VT)水準(低強度)での6分間の一定負荷運動テストを実施した。さらに、平成14年度は、1)VT強度にVT強度と最大運動負荷の中間の負荷を加算した高強度(Δ50%VT)での一定負荷運動テストを実施した。これらの運動負荷テストにおいては呼気ガス変量(VO_2,VCO_2,V_E)、血中乳酸([lactate])、血液ガス(pH, PO_2,PCO_2,HCO_3^-)を測定し、漸増負荷テストでの各個人毎のVO_2-VCO_2の関係式より重炭酸塩([HCO_3^-])のlactateの緩衝の結果生じる二酸化炭素過剰排出(total excess CO_2 output)を算出し、活動筋の代謝・動員様式に伴う活動筋緩衝由来のexcess CO_2 outputを評価した。漸増負荷運動および二つの一定負荷運動時におけるtotal excess CO_2 outputはΔ[lactate](r=0.883, P<0.001)およびΔ[HCO_3^-](r=0.913, P<0.001)と密接に相関し、生体全体における乳酸の重炭酸系による緩衝比率には運動負荷による違いは認められなかった。一方、活動筋由来のexcess CO_2 outputのtotal excess CO_2 outputに占める割合は、漸増負荷運動(62.4%)よりも低強度(49.5%)と高強度(49.4)の一定負荷運動で低値を示したが、負荷強度による違いはなかった。この結果より、一定負荷運動時においては、その運動全体を通して筋組織内での乳酸生成率に大きな変化がないことにより、生体の各コンパートメントでの重炭酸系による乳酸緩衝の程度が安定していたことが指摘される。従って、活動筋由来のexcess CO_2 outputからの活動筋内の乳酸濃度推定には、運動負荷全体を通しての筋代謝水準と筋動員量に大きな変動がないことが重要な要素となると考えられる。
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