大学の陸上部に所属している男子長距離選手21名を対象として、スポーツ心臓と心血管系遺伝子多型について検討し、以下の結果を得た。それぞれの値はmeam±S.D.にて示す。 1.アンギオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme、ACE)遺伝子の遺伝子多型についてはDD型2名(9.5%)、DI型9名(42.9%)、II型10名(47.6%)であった。またアンギオテンシノーゲン(angiotensinogen、AGT)遺伝子の遺伝子多型についてはTT型11名(52.4%)、MT型10名(47.6%)であった。 2.心電図では、トレーニングによる明らかな徐脈(HR494±7.7/min)と左室高電位(RV5+SV14.26±1.12mV)が認められた。心エコーでは、LV mass(263.3±47.3g)にトレーニングによる増大傾向がみられた。しかしながら、ACE遺伝子多型およびAGT遺伝子多型について有意な変化は見られず、いずれも心肥大とは関連していなかった。 3.加速度脈波については、ACE遺伝子多型のDD型+DI型に総合的な血管機能指数(APG-AI)の低下が認められた。 4.不整脈については、ホルター心電図にて2秒以上のpauseが17名中11名(64.7%)に高率にみられた。また最低心拍数がAGT遺伝子多型のTT型において、MT型より低値であった。 5.運動代謝能力については、トレーニングにより最大酸素摂取量が高値であったが(68.1±5.4ml/kg/min)、ACE遺伝子多型およびAGT遺伝子多型について有意な変化は認めなかった。
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