研究概要 |
1.免疫組織化学的検討:低酸素暴露解除後のラット頚動脈小体内のペプチド性神経支配を検討するに先立ち、低酸素暴露開始後2週、1ヶ月、2ヶ月および3ヶ月の経時的変化を検討した。各種神経ペプチド抗体(SP,CGRP,VIP,NPY)を用いた免疫組織化学的検討により、SPおよびCGRP陽性線維の分布密度は暴露後1ヶ月で有意な増加が認められたが、その後2-3ヶ月ではコントロールレベルよりも低い値を示した。VIP陽性線維は全ての時期で有意な増加が認められたが、暴露後1ヶ月で高い分布密度を示した。NPY陽性線維の分布密度は暴露期間による有意な差は認められなかった。これまでに、血管拡張は主としてVIPの作用であると考えて来たが、暴露1ヶ月の頚動脈小体では、SPおよびCGRPも血管拡張に関与するとともに化学受容への関与も推測される。また、暴露後2-3ヶ月の状態はほぼ順応した状態を示すものと考えられる。一方、慢性低酸素暴露後、正常大気圧環境に戻した(1ヶ月後)ラット頚動脈小体におけるペプチド性神経線維の推移は、SP、CGRPおよびVIP免疫陽性神経線維の分布密度には大きな変化は認められなかったが、NPY免疫陽性線維の密度には有意な増加傾向が認められた。 2.組織計測による検討:ラット頚動脈小体は、暴露2週後で1.4倍、1ヶ月後で2.1倍、2-3ヶ月後で2.6-2.8倍に大きくなった。一方、慢性低酸素暴露解除後1ヶ月のラット頚動脈小体は、肥大した血管はコントロールの血管に近いレベルにまで戻り、頚動脈小体は縮小した。 3.血液ガス、血圧、心拍数の検討:低酸素暴露に伴い、PO2およびPCO2測定値は下がり、低酸素暴露が有効であることを示した。一方、平均血圧の低下、心拍数および腎交感神経活動の上昇を示した。
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