研究概要 |
持久性トレーニングを縦断的に4年間追究すると、赤血球数(RBC)の低下に伴い、平均赤血球容積(MVC)と平均血色素量(MCH)の増加が生じ、本研究課題となった。血管内を流れる赤血球に関する問題となるので、この変化には至適な現象が存在していることは当初から予測できた。MCVだけが増大すればヘマトクリット値(HCT)が高まり血液粘度が大きくなり、酸素輸送は悪くなる。したがってMCV増大の背景には少なくともRBCとの関係があるはずである。一方MCVが大きくなるための素材はどこにあるかが問題となる。Plasma HDLは血管の補修素材であるため、MCVへの素材の可能性は考えられる。またMCVそれ自体にも特性があるはづで、in vitroによりその要因について検討した。その結果大きなMCV変化を示した選手では、トレーニング開始時のRBCが高く、トレーニング後のRBCに有意な低下が認められた(P<0.05)。中程度のMCV変化の選手では前後のRBCに統計的な差は出現していないが、小さなMCV変化の選手では逆にRBCの有意な増加となり、MCV増加の背景にはトレーニング初期のRBCに依存していることを明らかにした。またMCVとPlasma HDLとの間には有意な相関を示す選手と示さない選手に別れ、これら相関係数(r)と10,000m走との間に指数関係が成立していた。したがって素材としてのPlasma HDLを保持していることも、MCV増大に関係していた。in vitro研究では、CO2に対し、MCVは正の相関を示し、低いO2水準ではMCVが大きいが、160mmHgを越えると、MCVは急俊に小さくなる。pHの酸性側では大きく、中性並びにアルカリ性では小さく、高温で小さくなるなどの特性も見い出された。このようにMCVの背景にはトレーニングに関する種々な要因と、RBCを中心とする個人差が大きく関与していた。
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