本研究は、減量・ウエイトコントロールを必要とする肥満者を対象に、12週間のトレーニング期間で歩行運動を週3回の頻度で、1回が高地(低圧低酸素環境)、残り2回が平地(常圧環境)の併用によるトレーニングの有効性について身体組成およびエネルギー代謝の面からどのような影響を及ぼすかを検討した。その結果、1.トレーニング前後の体重は、実験群および対照群(週3回、常圧環境下の歩行運動)の両群とも、有意な低下を示した(p<0.01、p<0.05)。トレーニング前後の平均値の差では、実験群の方が対照群に比較して、より大きな傾向を示した。2.体脂肪率は、実験群および対照群とも有意な低下を示した(p<0.01、p<0.05)。3.体脂肪量は、実験群および対照群とも有意な低下を示した。(いずれもp<0.05)。トレーニング前後の平均値の差は、体重の変化と同様に実験群が対照群に比較して、より大きな傾向を示した。除脂肪体重、(LBM)は、両群ともトレーニング前後でほぼ同値を示した。トレーニング前後の安静時代謝量は、実験群が有意な増加を示した(p<0.05)のに対して、対照群では、有意な差が認められなかった。5.トレーニング前後の安静時における脂肪からのエネルギー消費量は、実験群および対照群とも有意な増加を示した(p<0.01、p<0.05)。トレーニング前後の平均値の差では、実験群の方が対照群に比較して、より大きな傾向を示した。以上、本研究の成績から、肥満者を対象に、トレーニング頻度を週3回とした場合、1回の高地(低圧低酸素環境)と残り2回の平地(常圧環境)の併用による歩行運動は、単に平地(常圧環境)の歩行運動(週3回の頻度)に比較して、長期間にわたって継続することで安静時代謝量の亢進および脂質代謝の改善が行われ、より効果的な減量ができる可能性のあることが示唆された。これらの観点からも本トレーニングシステムは、肥満の有効な運動療法の1つになることが考えられる。
|