1.介護老人保健施設に入所している高齢者の身体活動水準と実施されている身体活動プログラムの強度について検討するために、1日の平均歩数と各種プログラム時の床反力データの収集を行った。平均歩数は同年代の在宅高齢者より顕著に少なく、活動プログラムは鉛直方向に最大でも体重の1/10前後の負荷が瞬間的にかかる程度の軽度の内容がほとんどであった。質的内容の検討以前に、まず活動量を量的に保障する必要性が考えられた。 2.脆弱な高齢者の歩行能力・筋力や身体能力の認知度と日常生活動作の遂行能力との関係等について検討するために日常生活自立度がJ1からB2の67歳から88歳の男女16名を被験者として測定を行った。各被験者は脳血管性の片麻痺や多発性脳梗塞、パーキンソン病などを罹患していたが、独力歩行が可能であり、失行や失認は認められなかった。最大等尺性膝関節伸展筋力と最大歩行速度は、従来報告してきた屋内自立のための下限レベルとほぼ同程度であった。身体能力の認知度と日常生活動作の指標として、"バーまたぎ越し"を課し、眼で見て"またぐのが困難"と判断する高さと、実際にまたぐ動作を行ったときの臨界点を記録した。眼で見て判断する臨界点は脚長の84%(57cm)前後、実際の臨界点は77%(52cm)前後であった。バーまたぎの臨界点は相互に有意に関連していたが、いずれも脚筋力・歩行能力とは有意な相関を示さなかった。眼で見た判断と実際の行為のズレは脳血管性片麻痺の場合に大きくなる傾向が見られ、日常生活自立度や歩行能力、脚筋力よりも、障害の種類による影響の可能性が示唆された。 3.視覚障害高齢者の身体活動量におよぼす施設での活動プログラムの影響を検討するために、高齢視覚障害者の生活パターンと身体活動水準について1週間連続測定した。通所時の活動水準は、音刺激を利用した歩行プログラムやレクリェーションプログラム等の実施により高く保たれていたが、在宅時はほぼ寝たきりの状態で過ごしていることが明らかとなり、家族への適切な働きかけとヘルパー等の支援体制の必要性が再確認された。
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