平成14年度においては、主に山形県、秋田県を対象に調査し、また栃木県では文献資料の収集をおこなった。調査をおこなう過程で、いくつかの問題が浮き彫りになった。その中のもっとも重要な問題が、調査対象となった様々なスポーツ的な現象が果たしてスポーツとして認定してよいのか、という点であった。ある現象をスポーツとして認定するのは、実は研究者の側であって、その担い手たちの理解とは、必ずしも一致するものではないからである。また、仮に認定されたスポーツ的現象が当該社会で、どのように理解されてきたのかによって、それを記述している資料の解釈が微妙に異なることになる。フィールドワークを実施するにあたって、この問題は重要である。 以上のような問題をどのように受け止めながら、フィールドワークを実践するのか、ということが特に今年度の中心的な課題でもあった。このような問題を多少なりとも解決する方法として、ひとつは、対象となる現象の歴史的な記述や語りについて詳細に検討してみるという試みである。現地の人々の語りは、対象となる現象をどのように理解してきたのかを知ることができるとともに、その語りによって作り上げられる語り部たちの認識をも固定化させるという現象を生み出しており、これを丹念に分析することによって、新しいフィールドワークの方法が逆に導き出されるという可能性が見えてきた。またこれまで述べてきたことは、いわゆる現在、文化人類学において問題視されているポスト・コロニアル的な現象のひとつでもある。これまで述べてきたことについては、今年度の末に、その一部を発表している。
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