本年度は、この研究の最終年度であったため、これまでの研究の成果をまとめるために、若干の補充調査とある程度まとまった研究成果を発表することで、他の研究者からさまざまな意見や修正点を提示してもらい、それをも含めた形で最終的な報告書を完成した。 本研究の意図したところは、基本的にスポーツ人類学に特化した視点から、あらたなフィールドワークの方法を検討し、提示することと、それを可能にするための基礎的なフィールドワークの見直しであった。結果として、スポーツ人類学としてのフィールドワークは、スポーツそのもののパフォーマンスを中心に据えて、それを取り巻く社会との関係から見る「外側からの見方」とスポーツをおこなう個人や共同体の内部に目を向ける「内側からの見方」の2点が提案された。前者の見方は、組織や制度、社会構造といったものとの関係性の中で明らかにされる共同体ないしは個人の位置についての記述であり、後者はスポーツ技術の習得やその認識、またこれら技術の獲得過程で理解される専門的な知識といったものが中心となる。こうした視点によって、スポーツそのものを立体的に把握することができるとともに、それが引いてはスポーツ人類学独自の民族誌のあり方につながると考えられる。そのためにも、スポーツ人類学におけるフィールドワークの独自性が強調され、そのための方法が提案されなければならず、本研究によって提示されたフィールドワークの方法論は、少なくとも今後のスポーツ人類学のフィールドワークを考えていく上での試金石となるはずである。 以上が、最終年度までで得られた結果の概要である。
|