若年女性15人を対象に、10分間の起立負荷(傾斜60度)を行い、起立耐性能と大腿筋力、体格との関係を検討した。起立耐性能は負荷前(臥位)からの胸部インピーダンス・血圧・心拍数の変化より評価した。 起立負荷時の胸部血液量の指標である胸部インピーダンスと血圧の変化によって、胸部血液量の減少が著しく、且つ血圧が増加した群(血圧上昇群と略す)5人、胸部血液量の減少が著しく、且つ血圧の減少が著明だった群(血圧下降群と略す)3人と胸部血液量の変化が軽度だった(軽度群と略す)7人の3群に分けて解析した。血圧上昇群では起立直後から血圧は平均で約2mmHg上昇し、ほぼそのままの値で10分まで推移した。血圧下降群では起立直後から2分後に約6mmHg下降したが、5分後には回復した。軽度群では起立直後に約2mmHg下降したが、2分後には回復した。 3群間で体格(身長・体重・BMI)には差がなかった。大腿四頭筋の最大筋力は軽度群が他の2群に比べて有意に小さかった。筋持久力は血圧下降群が優れている傾向があった。臥位時の循環特性では心拍数、最高血圧、最低血圧、平均血圧には3群間で差がなかった。 起立負荷時の心拍数は3群共に、負荷直後から2分まで増加し、以後10分まで増加したままで推移した。増加度は血圧下降群、血圧上昇群、軽度群の順であった。また起立負荷によってR-R間隔のスペクトル解析によるLF/HF比は上昇したが、3群間で差はなかった。 以上の結果から、起立負荷による胸部から下肢への血液移動は大腿最大筋力に関連することが示唆された。しかし、起立負荷時の血圧調節には、筋力のみでなく筋線維タイプが関連している可能性が示された。
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