平成14年度では、高強度の運動関始時における酸素摂取応答の規定要因を検討した。従来の自転車(CE)や走歩行の運動様式においては、活動筋における酸素の供給と利用の連続計測は困難であるため、活動部位を大腿四頭筋に限定でき、さらに体動が少ない膝関節伸展運動様式(KE)に着目した。 1)KE運動開始時の肺酸素摂取量(pVo_2)の平均応答時間、急成分の酸素コスト(ゲイン、ml/min/W)、緩成分(slow component)の割合は、CEよりも有意に大きかった。この原因は、両運動様式の活動筋量、筋への酸素供給、筋繊維動員パターンや代謝反応が異なるためと示唆される。 2)KE運動開始時の大腿動脈血流量(超音波ドップラー計測)の応答は、pVo_2および大腿四頭筋の酸素消費応答(mVo_2)(大腿静脈血酸素量のカテーテル実測と大腿動脈血流量から計算、動脈血酸素量は一定と仮定)よりも有意に速かった。さらに、肺レベルのpVo_2動態は、大腿四頭筋のmVo_2動態を反映した。また、運動強度に関係なく、急成分応答の速さ(時定数)が一定であること(動的線形性)が確認された。したがって、健常者が座位姿勢で脚運動を開始する場合、肺酸素摂取の動的変化を規定するのは活動筋への酸素供給ではなく、筋内の酸素利用(酸化燐酸酵素活性の遅れ、酸素消費・血流比の不均等分布など)であることが示唆された。
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