研究概要 |
平成14年度は、まず、ローイング運動を日常規則的に行っている中高年男性の呼吸循環器系機能(最大酸素摂取量:Vo2max)と血中脂質・リポ蛋白プロフィールについて、体格を一致させた運動習慣のない同年齢層の一般人と比較した。その結果、ローイング愛好者のVo2max(L/min)は一般人よりも著しく高く、動脈硬化指数(LDL-コレステロール/HDL-コレステロール)も抗動脈硬化型であることが明らかになり、中高年者に対するローイング運動の健康増進効果の一端が示唆された。 また、中高年男性ローイング愛好者(年齢:65±3歳、身長:171±4cm、体重:68±6kg)、及び同年齢層の一般人(66±4歳、170±4cm、67±7kg)の大腿部伸展筋横断面積(CSA)をMRIにより測定し、脚伸展筋力との関係を検討した。ローイング愛好者の大腿部伸展筋CSA(77.8±5.4cm2)は一般人のCSA(68.4±5.4cm2)よりも有意に大きかった。また、ローイング愛好者の脚伸展パワーも一般人よりも著しく高くなっていた(1,624±217vs.1,296±232W, P<0.05)。しかし、CSA当たりの脚伸展力は両グループ間に差がみられなかった(20.9±2.0vs.19.9±2.1W/cm2)。脚伸展パワーと脚伸展筋CSAとの間には有意な相関関係が認められた(59-89cm2,r=0.74,P<0.001)。さらに、中高年ローイング愛好者の2,000mローイング・エルゴメータによるパフォーマンス(479-520sec)と脚伸展筋CSA(68-89cm2)との間には有意な相関関係が認められた(r=0.63,P<0.01)。本研究の結果は、ローイングが加齢による筋の萎縮・弱化を防いでいることを示唆している。 ローイング・エルゴメータによる漸増運動負荷テストを行い、トレッドミルを用いた負荷テストにおける酸素摂取量(Vo2)と心拍数(HR)の応答に関して中高年ローイング愛好者を対象として比較検討した。その結果、最大、及び最大下レベルでのVo2はローイングの方がランニングよりもやや高くなっていたが、HRはむしろ低くなっており、中高年者の運動処方にローイングを取り入れる場合にHRを強度の指標とするには注意が必要であることが明らかとなった。
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