研究概要 |
随意収縮力の変化は運動単位(MU)の動員と発火頻度によって調節される。これらMU活動の分析は,神経-筋機能の生理的メカニズムを解明する上で重要である。長年にわたるMU活動様式の研究では,主として,筋内筋電図が使用されてきた。しかし,侵襲的な本検査法は,被験者に対する負担が大きいことから,無侵襲的検査法の開発が切望されている。一方,我々は先行研究において,一定筋力保持中に体表面上で導出された筋音図(Mechanomyogram : MMG)がMU活動様式と対応した変化を示すことを報告してきた。 本研究では,これまでの研究を一歩すすめ,連続的力変化時のMU活動様式をMMG信号によって同定することを目的とした。ここでは,非線形的に変化するMMG信号の周波数解析として,時間-周波数解析を新たに導入し,連続的に変化するMU活動様式の同定を試みることとした。 連続的な力増加に伴うMUの動員と発火頻度の相対的役割は,筋によって異なることが知られている。そこで,本研究では様々な筋について,連続的な力増加時に記録されたMMGを解析・比較し,MMGの短時間フーリエ変換解析によるMU活動様式同定の有用性を確認することとした。 実験では,筋内筋電図法によってMU活動様式について比較的多くの報告がなされている上腕二頭筋,大腿四頭筋,第一背側骨間筋を対象とする。そこで,本年度は各筋の筋力計測装置をそれぞれ作成した。ここでは対象とする筋の力発揮が効果的に計測可能であること,また,筋力計測器の振動がMMG信号に対して雑音として混入する危険性を回避することを考慮した。これまでに,作成された力計測装置を用いて,健常成人男性の上腕二頭筋,大腿四頭筋を対象としたMMGの計測を完了した。なお,第1背側骨間筋の計測については進行中である。
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