研究課題
本年度は、農業政策や地域政策が直接的、間接的に多就業農業の維持にどのように寄与しているか評価した。富山県砺波平野においては、水稲作農業に通勤兼業を組み合わせた多就業農業が成立している。その背景には、水稲作における機械化の進展と圃場整備による省力化の進展、ならびにモータリゼーションの進展と農村地域への工場の進出があった。この機械化の進展と圃場整備は、農業政策によって促進されたものであり、同様に農業政策によって推進された農道の整備は、農家にとって就業機会へのアクセスを改善し、また農村地域への工場や商店の進出をもたらした農業の規模拡大と効率化を目指す農業政策が、逆にそしてまた間接的に小規楳な家族経営の多就業農業を持続させる効果をもっていると考えられる。一方、ヨーロッパにおいては農業政策や地域政策においては、とりわけ周辺農山村地域における多就業農業の維持が図られている。観光を組み込んだかたちで多就業農業が成立しているドイツ・バイエルン州において、多就業農業を成立させている条件として、酪農経営や林業経営の存在とそれらによる田園景観とレクリェーション空間の創出や家族内分業における女性の役割の重要性に加え、EUおよび政府による農林業と観光に対する助成か挙げられる。農林業経営に対する直接補助、民宿の改良に対する補助などが農家民宿経営を支えており、また、州政府と現地指導員による経営へのアドバイスが重要な役割を果たしていた。農家民宿は、公的助成を受けつつ、様々なニーズをくみ取りながら経営を変化させていることが明らかとなった。
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Geographical Reports of Tokyo Metropolitan University 39
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The Regional Dimension and Contemporary challenges to Rural Sustainability(Bicaiho, A.M. and Foefle, S.W eds.)
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