研究課題
基盤研究(C)
農業と農外就業を家族内で分担する多就業農業の実態とその地域的展開を明らかにすることを目的とした。まず、兼業や多就業農業に関するこれまでの議論と調査研究成果について収集整理した結果、ヨーロッパではこれまで以上に様々な研究分野で、また、地域・農業政策遂行の上で、多就業農業に注目が集まり、とりわけ山間地など条件不利地域で多就業農業が成立していること、さらにその実態把握が要請されていることが明らかとなった。ヨーロッパ、中でもドイツ・バイエルン州農村を取り上げ、農家民宿というかたちで観光を組み込んだ多就業農業が成立していることを示した。この多就業農業は、宅地、耗域、林地と、農家を取り巻く多様な圏域の複合的な利用を前提にしており、逆にまた、多就業農業がこれら圏域の維持に貢献している。日本においても多就業農業が農村社会の維持に貢献していること、多就業農業のタイプとして、平野の「水稲作兼業」、山地・丘陵地における「米畜産の複合と季節労働の組み合わせ」、都市郊外の「野菜の他作物の複合経営と自営兼業の組み合わせ」があることが明らかとなった。また、多就業農業は日本やヨーロッパなど工業化・都市化の進展した地域ばかりでなく世界の広範囲の地域に成立していることも明らかとなった。このように、多就業農業が、農家に対して安定した収入源を提供することで、農村において定住を可能とし、農村コミュニティの維持に繋がっていることが明らかとなった。
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