研究概要 |
本研究の目的は、エスニック集団と地域との相互関係を、グローバリゼーション下の在日インド人社会を対象に考察するものである。在日インド人ディアスポラに焦点を合わせ、1990年以降の経済・文化のグローバル化のもと、越境するネットワークとコミュニティとの再帰的関係をみた。特に対象としたのは、阪神地区(特に貿易港・神戸)の在日インド人社会(開国以降のオールドカマー)と「世界都市・東京」のインド人社会(増加しているIT労働者を中心としたニューカマー)である。これらの作業を通じて、エスニック集団と場所との生産・再生産の過程を分析した。 (1)エスニック集団・ディアスポラ・グローバリゼーションの関係についての理論構築 エスニツクな集団が彼らの場所を生産し、その場所が彼らをエスニックなアイデンティティをもつ存在としていかに生産するのか、その再帰的関係を都市論・構造化理論・現象学のアプローチを援用しながら論点を整理し、人文地理学に新たな視角を提起した。 (2)ミロスケールにおける基礎統計の収集・個人史の聞き取り分析--在日インド人ディアスポラの動向 在日インド人に関する統計や情報をもとにローカルレベルにおけるコミュニティとの関係を考察した。 1)ミクロスケールにおける在日インド人の居住地・就業地分布,就業構造及びその変化に関して、インド人社会組織などの資料を用いて分析を行う。彼らの集住地区の形成と変化を把握し,セグリゲーションの要因を労働市場と住宅市場,さらにサービス供給(消費財・教育・宗教)・社会組織の点から考察した。 2)東京地区および阪神地区の在日インド人の社会組織への聞き取り調査により、その形成のメカニズムとその変化を解明する。また在日インド人の個人史の聞き取り調査により、ネットワークの空間的広がりとアイデンティティの再生産との関煙を分析した。
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